事務職への転職を考えている人はとても多いです。
特に女性は比較的残業も少なく、体力的にも負担が少ないからというような理由で、それほど深くは考えずに事務職を希望する人も決して少なくありません。
しかし、事務職への転職、特に正社員を希望する場合には、転職市場を理解した上で、転職成功のための準備を進めていかなければ、失敗する確率が高くなってしまいます。
それは反対に、しっかり準備を進めていけば、安易に事務職への転職を考える人と差をつけることができるということでもあります。
「事務職への転職事情がどのようなものなのか」、「転職成功するためにはどうしたらよいのか」ということを解説していますので、最後までお読みいただければ、転職成功に一歩近づけると思いますので、ぜひ参考にしてください。
事務職への転職が難しい理由
事務職への転職が難しいと言われている理由は主に下記の3点です。
- 人気が高い職種だから
- 事務職へのニーズが減っている
- 経験者との比較になる
そもそも事務職は倍率が高い人気職種
厚生労働省の発表する「一般職業紹介状況(平成30年3月分)」(2018年5月現在最新)では、事務職の求人倍率は0.46倍となっています。
こちらはパートを除く常用の雇用形態全ての求人倍率での統計ですので、正社員に限定した場合はもう少し高くなると厚生労働省は伝えています。
しかし、それにしても、求職者1人につき0.46社の求人しかないというのが実情だということを、きちんと認識することが大切です。
事務職を分類した場合の求人倍率は下記の通りです。
- 一般事務・・・0.32倍
- 会計事務・・・0.66倍
- 生産関連事務・・・0.66倍
- 営業販売関連事務・・0.88倍
- 外勤事務・・・4.18倍
- 運輸・郵便事務・・・3.15倍
一般事務への転職は特に厳しい
中でも一般事務は0.32倍と一番求人倍率が高く、正社員で転職するのは狭き門であると言えます。
一般事務は会社規模によっては、会計事務や営業事務と同様の仕事を求められることも少なくありませんが、基本的にはアシスタント業務が多いため、比較的仕事を覚えやすく、難しい部類の仕事ではないと言われています。
企業の売上を産む職種ではないため、少人数の構成で担当することの多い職種である上に、離職率も低いので、当然人気職種として求人に対するライバルが多くなります。
事務職へのニーズが減っている
前述したように事務職は、比較的誰でも覚えやすい仕事なため、賃金の安い若手が優遇されやすいです。また、派遣社員などのアウトソーシング化も進んでおり、正社員として雇用しない企業も少なくありません。
さらに、ここ10年で電子化も進んだ結果、少ない人手でできるようになっていっています。
ただし、一概にニーズが減っていると断言するものではなく、景気を含めた転職市場の動向によっては、需要が増えている時期もあります。
参考までに、転職サイトdodaの統計では、事務職の求人数自体は増加傾向にあると発表しています。
しかし、事務職を希望する求職者の数も増えているので、求人倍率が改善されているわけではありませんので注意が必要です。
経験がある人との比較になる
企業とすれば、給与を支払うのであれば、より仕事ができ長く勤めてくれる人が良いのは言うまでもありません。
求人倍率が低く、買い手市場が続いている事務職の場合、経験や能力が高い人が優先して採用される傾向があります。
そうなると、実績のある経験者との争いになってくるので、さしたるキャリアが無い人は簡単に内定が決まらないというケースが多くなります。
ただし、前述のとおり、比較的誰でも覚えやすい仕事が多いだけに、コミュニケーション能力を含めた人間的な魅力がある人などは、すんなり決まるケースもあるようです。
また、女性の場合は、結婚や出産のことも念頭に入れて採用する必要性が出てきますので、同程度のスキルであれば、若手のほうが有利になるケースもあります。
事務職未経験ならさらに厳しい?
ここまでお話ししてきたように、事務職はもともと人気職種です。未経験者は経験者をライバルに転職活動をする必要性があるため、より厳しい状況が考えられます。
しかし、転職サイトのdodaの調査では、異職種からの転職が最も多いのは「事務/アシスタント系」で、実に76%もの割合になります。
事務職の中でも専門的なスキルが必要ない職種であれば、他職種からでも活躍ができる人材だと思えば雇用しているケースが多いということです。
異職種からの転職というくくりなので、全員が未経験者とは限りませんが、未経験の人もとても多いのは間違いありません。
前職(現職)の職種を問わない求人の割合は23%というデータも同じ調査で明らかになっていますので、事務職を未経験だからといって諦める必要はないと言えます。
また、元々営業職の人が営業事務を希望する場合は、営業未経験の人より売上に対する意識も高いでしょうし、活躍してくれる姿が想像しやすいですよね。
同様に経理経験者が会計事務といった流れも多少はあるでしょう。
いずれにせよ、前職までの経験や培ったスキル、持ち前の人間的な長所などを総合的に考慮して、活躍してくれる人材を採用したいと企業は考えています。
事務職未経験者の場合は、今までの経験をどう活かして活躍できるのかという点をアピールしていくことが大切です。
志望動機や自己PRでは、事務職に繋げられるエピソードや特徴をアピールできるように準備していきましょう。
事務職に求められるスキル
事務職といえば、日常のルーティンワークを繰り返し正確に行うスキルが求められると言われがちですが、電子化が進んだ影響もありますし、求められるスキルは常に変化していくといっても過言ではありません。
ExcelやWordをある程度使えるといったPCスキルがあり、コツコツ正確に事務仕事をこなせるというのは、前提の上で、下記のようなスキルも評価されます。
コミュニケーション能力
事務職は、もくもくと作業をこなすことだけを求められているわけではありません。
他職種をサポートする業務も少なくないため、円滑なコミュニケーションができるかどうかは重要な要素の1つになります。
コミュニケーション能力はエピソードを通して自己PRでアピールすることもできますが、基本的には面接でのやり取りの中での印象が大切になりますので、まずは明るくハッキリと受け答えできるように心がけてください。
配慮ができる能力
企業によっては広範な仕事内容になるため、他職種の仕事がどのようなものなのか、どうサポートしたら生産性が上がるのかなど、日々の仕事の中でくみ取れるような繊細さや相手を思いやる姿勢がある人は好まれます。
事務職は売上に直結する仕事ではないから、さほど重要でないと考えるのではなく、他職種の行間を埋めるような業務も多いだけに、全体の労働生産性を上げることのできる重要な仕事と捉えて欲しいと思います。
事務職への転職に成功するための4つのポイント
事務職への転職は人気職種なだけに簡単ではありませんが、そのことを認識してしっかり準備を進めていけば、満足のいく転職を実現させることは充分可能です。
転職成功に向けた準備としては、下記の3点が重要です。
- 希望条件を明確にしておく
- 自己分析をしっかり行う
- 企業ニーズに合ったアピールをする
希望条件を明確にしておく
なんとなく事務職での転職を選ぶ人が少なくない中、しっかりと準備をして選考に臨めば、それだけライバルとの差をつけることができます。
希望条件は「これだけは譲れない条件」と「できれば叶えたいが譲っても良い条件」というように、優先順位を決めておくようにしましょう。
全ての条件を満たす企業ばかりに応募を繰り返して、なかなか内定が決まらないという失敗パターンを防ぐのが狙いです。
転職エージェントを利用した場合も、希望が多ければ多いほど紹介先の選択肢は少なくなってしまいます。
「ちょっと希望と違いますが、こういった企業もありますよ」と紹介されたときに「ここだけは譲れない」という条件と「譲ってもいい条件」が明確になっていれば、提案を受ける余地があるので選択肢を広げていくことができます。
譲れない条件はクリアしなければ、「どこでも良いから転職したい」と言っているようなものですから、転職後に「イメージと違う」と後悔することになるリスクは高いです。
その点でも条件が明確であれば、コンサルタントにも明確に意思表示ができますし、提案の精度も上がることになります。
自己分析をしっかり行う
今までの経歴の棚卸をしっかり行い、経験やスキルをエピソードを交えて伝えやすく整理しておくことが大切です。
また、自分の性格や特徴から、事務職に向いているというアピールができるように自己分析を進めていくようにしましょう。
性格や特徴なども「私はこういう性格です」と伝えるだけでは、説得力がまるで出ませんので、仕事の実績や工夫してきたこと、周囲の評価などを交えながら、伝わりやすいアピールを考えていくようにしましょう。
自分で考えるのが苦手な人は、自分の強みを知れるリクナビNEXTの「グッドポイント診断」などのツールを利用すると、進めやすいのでおすすめです。
企業ニーズに合ったアピールをする
同じ事務職でも、企業によって欲しい人材のニーズは違いがあります。
相手企業のことを何も考えずに、自分よがりのアピールを続けても、ニーズが違えば評価はされませんので、内定を得るのは難しくなってしまいます。
企業がどのような人材を希望しているかは、募集要項などを見てもある程度は把握できますが、実際のところは自力ではなかなか掴みづらいものです。
転職エージェントを活用する
転職エージェントでは無料のサービスですが、希望にマッチした求人を紹介してもらえます。また書類選考や面接対策、面接スケジュール交渉など、自力で行うと負担の大きい転職活動を様々な形でサポートしてもらうことができます。
転職エージェントは、企業から「こういう人材が良い」という希望も聞いていますし、過去の内定者の情報から読み取れる企業ニーズも押さえていますので、的外れなアピールをしなくて済みます。
転職エージェントは転職者を紹介して報酬を受け取るビジネスですから、受かる可能性の少ない企業は紹介してもらいづらいです。
ここはデメリットでもありますが、特に人気職種の場合、「受かる可能性の低い募集」に応募を繰り返し「転職は厳しい」と嘆く失敗パターンに陥りがちです。
もちろん、難しさを理解した上でチャレンジするのは良いですが、そうでない人の場合、内定が決まらなくて落ち込み続けることになるかもしれません。
転職エージェントは、内定可能性があり、かつ希望条件にマッチする求人を探して紹介してくれるので、書類選考も通りやすくなりますし、ニーズを押さえたアピールができることで内定率を上げることができます。
無料で利用できるので転職成功の為には積極的に利用するようにしてください。
事務職の転職におすすめの転職エージェント
求人数が圧倒的な上位2社(『リクルートエージェント』と『
doda』は、選択肢を広げる意味では必須ですが、ここでは事務職の転職の成功確率を上げてくれる、サポート力があり、親身になって求人を提案してくれたり、選考のサポートをしてくれるエージェントを紹介していきます。
マイナビエージェント
『マイナビエージェント』は、転職サイトマイナビでの知名度を活かしたサポートと、企業とのコネクションが強みで、良質な独自案件も多く保有しています。
求人数 | 求人数約2.3万件(内非公開求人 約1.8万件=現在は非公開) | |
求人の質 | 人材派遣業の経験が強み。正社員転職に強い。企業からの知名度は高いため、良質な求人が集まる。 | |
年収アップ率 | 64%(現在非公開) | |
サポートの質 | 採用支援業界大手の強みを活かし、業界や企業に精通するだけでなく、社風なども熟知している担当が多い。書類選考率や面接対策も万全で安心できる。 |
人材紹介業界大手の強みを活かした転職成功ノウハウを持っています。書類選考率や面接通過にこだわった対策もノウハウが蓄積されているからこそ。求人数自体は中規模だが求人紹介の質にはこだわりがあり「ホワイト企業」の紹介に定評があります。
typeの転職エージェント
typeの転職エージェントは、人材紹介の老舗キャリアデザインセンター運営の転職エージェント。事務職の求人を多く保有している。年収アップ率は71%と驚異的。手厚いサポートに定評がある。
求人数 | 求人数約2.1万件(内非公開求人 約1.8万件=現在は非公開)首都圏など都市部の企業が中心。 | |
求人の質 | 利益追求型ではない為、しっかり要望に適った適切な企業を紹介してくれると評判が高い。 | |
年収アップ率 | 71% | |
サポートの質 | サポートにも定評。サービスの質を強みにしようという姿勢は評価できる。アフターフォローも充実。 |
サービスにこだわった質を重視した姿勢を貫き、高い年収アップ率を実現している転職エージェント。首都圏や京阪神などの都市部中心だが、大手との差別化を「サービスの質」で図る姿勢は転職者にとっては有難い。
事務職未経験者におすすめの転職エージェント
ここからは、事務職未経験者や正社員経験のない方や経歴が浅い方におすすめの転職エージェントを紹介していきます。
事務職未経験の場合は、上記の「事務職に強い転職エージェント」にプラスして、下記に紹介する転職エージェントも登録していくことをおすすめします。
就職Shop
『就職Shop』は、リクルートが運営する主に20代の若手向けの転職支援サービスです。料金は全て無料で、支援してもらえるサービスは、「面談(ヒアリング)」「求人紹介」「面接対策・セミナー」「面接スケジュール調整」など、通常の転職エージェントと変わりがありません。
転職Shop独自の特徴は、下記の3点です。
- 正社員未経験から正社員を目指しやすい
- 書類選考がパスできる
- 面接対策やセミナーが充実している
- 転職後の事務職の割合は25%
既卒・フリーター・契約社員・派遣社員などの正社員未経験者や経歴の浅い若手に特化した支援サービスを提供している為、事務職未経験でも紹介してもらえる求人があります。
また、紹介の時点で書類選考をパスできるので、書類選考で落ち続けるような無駄を省くことができます。
実際に転職Shopの利用者で転職に成功した人のうち、4人に3人が正社員未経験の求職者ですから、事務未経験でも、正社員だった経歴があるだけで有利な状況が生まれます。
転職後の職種割合でも、事務職は25%もありますので、事務職希望の方にも利用価値が高いのでおすすめです。
ただし、紹介してもらえる地域は東京圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)と、大阪、神戸、京都に限定されています。
ワークポート
ワークポートは、元々はIT業界専門の転職エージェントでしたが、近年では総合型のエージェントとしてサービスを展開しています。
ワークポートの一番の特徴としては、「未経験に強い」ということ。
事務職の求人は決して多いとは言えませんが、未経験歓迎求人が多いので、利用価値はあります。
倍率の高い事務職ですから、複数の転職エージェントを利用していき、選択肢を増やすことが大切ですので、登録の選択肢として検討しましょう。
ハタラクティブ
ハタラクティブは、第二新卒、既卒者に強い転職エージェントです。
「フリーター」「既卒」の方などでもチャレンジできる「完全に未経験でも正社員として就職できる求人」をメインに取り扱っています。
にも関わらず、書類審査通過率91.4%、内定率80.4%と非常に優秀な実績を誇る転職エージェントでもあります。
転職後の事務職の割合は15%なので、就職Shopのほうが割合としては上ですが、全く経歴に自信がない人でも安心してサービスを受けることができるのでおすすめです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
事務職への転職は、倍率が高い人気職種だということを踏まえた上で、ライバルと差をつけるアピールが大切です。
転職エージェントを上手に活用しながら、希望の転職を実現できるように、しっかり準備を進めていきましょう。