サービス残業は当たり前ではありません。しかし、違法であるにも関わらず、労働者から改善がしづらいことでもあります。
日本では「仕事は終わるまでする」という慣習が長期間続いていたこともあり、未だにサービス残業をしている企業も多く見かけられます。
また、経営者が無知であることでサービス残業を強いられたり、名ばかり管理職、みなし残業などの問題もやはり解決していかなくてはいけない社会的な問題です。
このページでは、当たり前のようにサービス残業している人たちが、どう対策していけば良いのかを考えてみます。
サービス残業とは
まずは、サービス残業とは何か抑えておきましょう。
サービス残業は、「残業代の出ない残業」です。残業という名前がついていますが、就業時間前に会社に早出して仕事をすることや、終わらなかった仕事を家に持ち帰ってした時間もサービス残業に含まれます。
また、早出や残業以外にも、休日出勤割増賃金未払いも、意味合いで言えばサービス残業と同様でしょう。
労働基準法37条に「時間外労働(残業)、休日に労働した場合は割増賃金を支払わなくてはならない」と記されている通り、違法であり守られない場合「懲役6ヶ月以下又は30万円以下の罰金」に処されることがあります。
ただし、労働基準法違反として立件されるケースは稀です。労働基準法違反は案件数も多く、立証も困難なことから、多くの場合、野放しになっているような状態だと言えます。
なんでサビ残が起こるの?
なぜ、サービス残業が横行するようになったのでしょうか。
- 経営者が無知だから
- 多くの企業でやっているから
経営者が無知だから
コンプライアンスが叫ばれる時代にはなりましたが、それでも中小企業では、まだまだ経営者でも、名ばかり管理職や、みなし残業代を支払っていれば問題ないと考えているケースも多いようです。
また、「15分刻み」や「30分刻み」で残業代を支払うような企業も多く、例えば29分残業しても残業代が支払われなかったり、15分分しか支払われないケースがあります。
こういったケースも経営者の無知から起こっている場合があります。
多くの企業でやっているから
このケースは解っていてコストカットとして行っているケースです。名ばかり管理職、みなし残業を越えた残業代未払い、残業時間を1分単位で支払っていないなどは、知っていてやっている企業も散見されます。
「みんなもやってる」「バレない」「バレてから改善すればいい」などの理由から、コストカットの目イットのほうが大きいと考えている企業もあります。
日本では仕事が終わるまで帰らないような企業風土が根付いてきたこともあり、サービス残業ありきで成り立ってしまっている部分もあり、経営的な問題で悪しき慣習から抜け出すのが難しい企業もあります。
サービス残業を当たり前にしてはダメ
様々なな事情があったとしても、サービス残業は当たり前ではありませんし、許されることでもありません。
サービス残業を止める対策としてては、
- 労働基準監督署に通報して指導してもらう
- 直接経営陣に相談する
- 労働組合に相談する
などの方法がありますが、いずれも労働者側からすれば立場が悪くなるリスクが大きすぎて、行動にはうつしづらく、泣き寝入りするしかないケースが圧倒的でしょう。
もちろん、時間外労働の賃金をもうら権利がありますし、会社は支払う義務がありますから、証拠を揃えれば弁護士に相談するなどして請求することが可能です。
しかし、証拠を揃えられなければ、仮に裁判を起こしても請求が認められない可能性が高いです。
請求を考える場合は、まず一度、弁護士に相談し、タイムカードや日報、業務用メールなどの時間外労働の証拠をどのように揃えたら良いのかなど、相談してみると良いでしょう。
サービス残業が当たり前になっている企業のやり方
サービス残業が当たり前になっている企業は、わざわざ申告制にして台帳に記入して申告しなければならなかったり、少なく申告するように上司から言われたりと、労基法違反を犯すような事を平気で行っています。
しかし、そんな会社が五万とあるのも現実です。
Q うちの会社は残業を申告する台帳があります。タイムカードは毎日押しているのですが、申告はみんなしていないし、しづらいのでしていません。残業代は支払われていません。労基署に訴えてやろうかと思いますが、どうでしょうか。A ひどい会社ですが、こういう手法は良くあります。タイムカード以外にノートなどで台帳を用意している場合、時間外労働の報告制を取っていると思われます。上司のチェックが入るから申告できないという気持は解りますが、記入しないともらえなくても仕方ありません。
まっとうに働いた分を申告したとして、上司から怒られることもあるでしょうし、評価が下がってしまうことも考えられます。一度申告してみるのが良いと思いますが、ダメな場合転職も視野に入れるべきでしょう。
しかし、こういった会社は多いので、安直に辞めてしまって後悔が無いようにするには、どの程度の残業時間なのか、サービス残業以外は満足できているのか、という点を考えることも重要になります。
現状に満足ができているがサービス残業だけが問題な場合、数時間なら我慢しても続けるという選択肢もありますし、休日出勤の分までサービスになっているなど、酷すぎる場合はすぐに転職を考えることも必要かと思います。
会社の仕組みを変えられるのであれば一番ですが、理不尽なことにそうそう変えることは難しいでしょう。大手企業なら、いつ労基署が入った場合、メディアなどでも大々的に報道され、損失が計り知れない為、コンプライアンスを重視する方向になっていますが、まともに残業代払ったていたら会社が回らないケースもあります。
サービス残業が世間的に問題視される以前から、そうやって細々と経営していた会社では、労基署に入られても、経営危機になるよりマシと考えています。
証拠さえあれば、2年間はさかのぼって残業代を請求できますが、無ければ認められませんし、制度を正そうと思う正義感は良いですが、誰かが守ってくれる訳ではありませんので、総合的に考えていくことも必要でしょう。
残業時間や内容について、上司のチェックが入る形での申告制は、サービス残業をさせる為のものでしかない場合が多いと考えられます。例え本社がコンプライアンスの為に残業の実態を詳細に知りたいという目的でも、実際には残業が多ければ多い部署の管理者は悪い評価になる可能性が高く、現場ではできる限り過小申告したがるのがオチです。
どちらが正しくて、どちらが間違っているかだけではなく、それでも会社に残るのか、転職するのかで考えたほうが現実的ではあります。
A 完全に営業手当を悪用していると考えられますが、こういう会社も多いですね。営業マンは一定時間の残業はどうしても発生することが多いので、その分営業手当として毎月支払うというものですが、外回りなどで管理がしにくい面があるので、固定残業代として会社が規定しているのであれば、それ自体は違法ではありません。ただし、あくまで営業手当内で残業が収まっていることが条件になります。営業手当などえ、定額で支払いされた残業代より多くの残業があった場合は、差額が支払われるのは当然で、支払われていなければサービス残業ということです。2017年7月には、定額残業制についての残業代支払に関する通達が出されましたが、証拠を集め訴える場合は有効でも、実際に制度の悪用が社会的に無くなるのには、相当なハードルがあるものと考えられます。少しずつでもこういった会社が減ることを望みますが、現状では訴えるか泣き寝入りするか、転職するかしか選択はありません。
営業職ではよくあることなので、周囲に相談しても「そんなもんでしょ」という答えが多いかもしれませんが、残業代を支払ってくれる会社ももちろんありますので、しっかり確認をした上で転職をするのも良いのではないでしょうか。
営業手当だけではなく、みなし残業代として定額で残業代を支払われるケースもあります。多くの場合、上司はみなし残業分より足が出ることを嫌うでしょうから、申告制も併用して管理している場合が多いと思います。
どの程度のサービス残業かにもよりますが、みなし残業を設定している会社も多いので、転職時には詳細に確認する必要があります。
転職するのも一つの方法
面倒なことをしたくないと請求を諦める人も多いですが、そのままその会社に居続けても、サービス残業を続けることになる可能性が高いのではないでしょうか。
納得ができていれば、会社に残る選択肢も悪いとは言い切れませんが、転職を検討するのも1つの解決方法ではあります。
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月間の合計残業時間と残業代の支給額や、有給取得日数なども掲載されているので便利です。
転職エージェントの利用がベスト
とはいえ、就職四季報に掲載されているのは3727社ですから、ここに掲載されていない企業のほうが多いですよね。
しかし、残業等のことは内部情報なので、ふつうに転職活動をしていても、実態を知ることは難しい部分があります。
もちろん、実際に会社の終業時間に行って、会社から出てくる人を調べてみたり、勤務している人に直接聞く方法もありますが、なかなかハードルが高いのが実際のところでしょう。
転職エージェントなら、内部情報を得られるので実際のところを聞けば、回答を得られます。
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