残業60時間は多いのか。
残業は少しくらいはあったほうが給与も増え助かることもあります。しかし、睡眠時間を削るほどの長時間の残業は体力的にも精神的にもきついですし、それを理由に転職する人も少なくありません。
ただ、世の中の一般的な残業時間を知らなければ、転職をしたところで残業の少ない会社が少なければ、選択肢は狭く良い会社が見つかるとは限らなくなってしまいます。
そこで、ここでは、まず法律上で60時間の残業が違法なのかどうか、本当にブラックなのか検証し、その後に一般的にどの程度の残業をしている人が多いのかということをデータに基づいて解説していきます。
残業60時間以上は違法?ブラック?
労働基準法では、労働時間は1日8時間まで、1週間で40時間以内と定められています。
しかし実際には、労働時間内では繁忙期など仕事が間に合わないことが十分考えられるため、労働基準法第36条に基づき、労使の間で「36(サブロク)協定」を結び、労働基準監督署に届けることで、企業が従業員を残業させても良いことになっています。
しかし、36協定を結べばいくら残業させても良いというわけではなく、期間別に「延長時間の限度」が定められています。
期間 限度時間 1週間 15時間 2週間 27時間 4週間 43時間 1か月 45時間 2か月 81時間 3か月 120時間 1年間 360時間 出典:厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」
www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/…/040324-4.pdf
このように、36協定では1か月45時間が限度であり、特別条項とで認められる、繁忙期などの一定期間の臨時措置としても、1か月60時間が限度とされています。
36協定は、以下でも解るように、知らない人も多くいますが、ブラック企業のいいなりなりにならない為には、労働者側が知っておく必要があります。
アンケートは6月に、20~65歳の働き手1千人(自営業やアルバイトなどは除く)にインターネットで実施。会社が残業を命じるには労使協定を結ぶ必要があることについて尋ねたところ、「知っている」と答えたのは56・5%、「知らない」は43・5%だった。
引用:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170716-00000031-asahi-soci
つまり、36協定を労使で結んでいる場合、一定期間は1か月で60時間までは認められるということになります。ただし、60時間以上の残業や、一定期間ではなくいつでも60時間の残業であれば、労働基準法では違法ということになります。
残業60時間が違法でもまかり通る理由
近年は世間もコンプライアンスに厳しい目を注ぐようになり、企業としても労基法を守ろうという動きがある事は確かです。
しかし、現実的には残業を申請せずに会社に残ったり、上司の手前、申請しづらい環境があったり、同調圧力が働いたりと、労基法の基準を超えた残業というのは少なくありません。
これまで、長時間の残業、しかもサービス残業で利益を出してきた企業が、残業代全てを支払ったり、残業時間を急激に少なくすれば、利益を出せずに苦しむケースも少なくないでしょう。
残業を少なくすれば、仕事が回らなくなり、人員を増やす必要も出てきますし、人員を増やせば人件費がかさみます。サービス残業で賄っていたのであれば、なおさら経営が厳しくなります。
売上高や経常利益の多い大企業ならまだしも、利益の小さい中小企業の場合は、なおさら違法でもサービス残業で補う以外に手がないという実態も少なからずあります。
本来は違法は違法なので、どんな理由も通用しないはずですが、実際には指導を受けるだけにとどまることも多いですし、最悪のケースで罰則がある場合も「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という小さいものですから、会社の存続が関わるなら労基法を違反したほうが良いと考える経営者もいなくなりません。l
Vorkersの調査では残業60時間以上は33.7%
企業の口コミサイト「vorlers」が行った残業時間に関するレポートによれば、平均残業時間(月間)の割合は下記の表の通りです。(投稿された68000件の社員による在籍企業の評価レポートから残業時間を対象にデータを集計したもの)
ちなみに、このデータでは、36(サブロク)協定では残業時間には入らない「代休・振替休日のない休日出勤」の時間も含まれていますので、純粋に平日のみの残業時間ではありませんが、時間外労働の目安としてはリアルなデータなので参考になるかと思います。
50時間以上の割合だけでも43.7%、60時間以上の残業をしている人だけでも33.7%と、かなりの割合の人が長時間残業をしていることが解ります。
ちなみに、年齢で見ると35歳までの年代は、大体どの年齢でも残業時間の平均が50時間以上(23歳のみ47時間程度)、35歳以上は年齢と共に残業時間が少なくなっていく傾向があります。
また、年収が高いほど残業時間は長く、特に35歳から39歳の年収1000万円以上の平均は70時間超というデータもあります。高年収をもらえるだけのスキルや立場があり、年代も働き盛り。活躍の場も多く残業が増えることが推察されます。
このデータを見ると、残業60時間は、平均以上で多いと言えますが、1/3以上の人が60時間以上の残業をしているということを考えれば、異常なほどの残業とは言い切れないことが伺えます。
残業が少ない企業へ転職したいなら
ここまで解説してきたように、残業60時間は確かに体力的にも精神的にもきついですが、例えば残業時間30時間以内の企業の割合は上記のデータでは42.5%ですから、選択肢自体が少なることは予想できます。
それでは、残業が少ない会社に転職する為にはどうしたら良いでしょうか。
ポイントとしては、下記の3点が挙げられます。
- 残業が多い業種・職種を避ける
- 労働環境を詳しく調べる
- 転職エージェントを利用する
1つずつ解説していきます。
残業が多い業種・職種を避ける
※出典:「vorlers」 残業時間に関するレポート
専門性が高く、年収も高い業種・職種では残業時間が多い傾向があります。業界全体で残業時間が多いケースもありますので、残業を少なくしたい場合は、残業の多い業界を避けることも検討したほうが良いかもしれません。
職種としては、役員は除外するにしても、コンサルタントのような専門性の高い職種が並びます。どの会社にもある営業職もやはりイメージ通り残業時間は長いです。
営業職は外出をしますが、社内で事務仕事もありますし、広範囲な業務内容になる事が多いので、残業多めになってしまうようです。
労働環境を詳しく調べる
応募企業を検討する際に、紹介したデータを発表しているvokersや転職会議のような転職口コミサイトで、実際に働いている人の労働環境をチェックするようにしましょう。
サービス残業の有無なども解る場合もありますし、その他のリアルな内部情報もある程度は解ります。
ただ、主観的な意見が中心なので、感情移入せず客観的に冷静に見る必要があるかと思います。
残業時間は載っていませんが、会社四季報では有給取得率や離職率を見ることができます。残業が多い会社はやはり体力的にも精神的にもきついですから離職率は上がりますし、必要以上に残業しなくてはならない企業では有給も取得しづらい可能性がありますので、参考になります。
転職エージェントを利用する
転職エージェントは、企業の詳細な情報を把握しています。企業自体との繋がりも深く、以前にエージェントを通して入社した社員もいることが多いことから、リアルな労働環境が解る場合も少なくありません。
転職エージェントは企業側だと思いがちですが、求職者の希望条件が残業少な目なら、むやみに過酷な残業時間の企業を紹介することはありません。
転職エージェントは入社後、半年も経たずに辞められてしまうと、ペナルティーもありますし、コンサルタントの評価にも関係しますから、できるだけ求職者の要望に応えようとしてくれます。
ただし、先に説明したとおり、35歳までの平均残業時間が50時間以上だということを考慮すれば、残業が少ないという条件は外せないと伝えた場合、経歴や年齢によっては紹介求人が少なくなる事も考えられますし、それでも紹介する場合は希望条件に合わない企業になったりすることも想定しておきましょう。
まずは、自分の市場価値で、残業少な目の企業をどれだけ紹介してもらえるのかを確認する事が大切です。
その上で、残業時間以外の年収や仕事内容などの諸条件も総合的に考えて、後悔のない転職先を見つけられるかが重要です。
転職エージェントを利用する場合は、まず、求人数が圧倒的な下記の2社から利用するようにおすすめします。
他のエージェントも利用価値が高い会社はありますが、求人数はこの2社が他社の5倍以上も保有しているので、選択肢を広げる為にも、市場価値を確認する為にも、第一選択肢になります。
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リクルートエージェント
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dodaと同じく、他の転職エージェントと比較した場合、求人数が圧倒的に多く、転職エージェントを利用する上で外せない選択肢です。